
下肢(大腿・下腿・足)のしびれ/筋力低下
下肢にしびれを生じる原因の大半は神経や血管の圧迫による病気(腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、足根管症候群など)ですが、中には他の病気(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血・脳腫瘍、糖尿病、閉塞性動脈硬化症など)が潜んでいる場合があります。
そんな下肢にシビレを生じる病気について簡単に説明します。
腰椎椎間板ヘルニア
働き盛りの若年層(20~40代)に多く、背骨(腰椎)に慢性的な負荷(不良姿勢やスポーツ、重労働など)が掛かる事で背骨の軟骨(椎間板)が本来の位置からはみ出て腰椎から下肢へ伸びる神経を圧迫する疾患です。洗顔やズボン/靴下をはく時など前かがみ姿勢で症状が悪化する傾向があります。
腰や臀部の痛み、脚のシビレ、力がいれずらい(筋力低下)等の症状や酷くなると排尿・排便障害などを発症します。
腰部脊柱管狭窄症
加齢によって背骨の変形や軟骨(椎間板)の変性、脊柱管(=背骨の中の脊髄神経が通る空間)内の靱帯の肥厚などが起こると脊柱管が狭くなって脊髄が圧迫され、腰痛や歩行時に下肢に痛みやシビレが生じる「間歇跛行」を発症します。「間歇跛行」とは長い距離を歩くと脊髄が圧迫され下肢に痛みやシビレを生じる事で、座ったり前かがみ姿勢をとると軽減するのが特徴です。長年腰に負担の掛かる仕事に従事した60歳以降の方に発症しやすい疾患です。
腰椎すべり症
腰椎すべり症は若年層に起こりやすい腰椎分離すべり症と、中年以降に起こりやすい腰椎変性すべり症があります。
腰椎分離すべり症はスポーツの激しいトレーニングなどで腰椎に過度な負担が掛かって疲労骨折が起き、それがそのまま放置されて腰椎が少しずつ本来の位置から前方へズレる疾患です。
一方の腰椎変性すべり症は加齢によって骨の変形や軟骨(椎間板)の変性によって腰椎が少しずつ本来の位置から前方へズレる疾患です。
いずれのすべり症でも腰椎が前方へずれる事で、背骨を通る脊髄の通り道(脊柱管)が狭くなって神経が圧迫され、腰痛や足の痛み、シビレを発症やすくなります。腰部脊柱管狭窄症と同様、長い距離を歩くとだんだん症状が強くなり、座ったり前かがみ姿勢をとると軽減する「間歇跛行」を発症することがあります。
閉塞性動脈硬化症
加齢、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、喫煙、運動不足などが原因で血管が硬く、狭く、詰まる事で血流が滞って下肢に十分な栄養や酸素が行き渡らなくなることで足の冷えや長い距離を歩くと痛みやシビレを生じます(間歇跛行)。症状は少し休むと治まりますが、又歩き出すとしばらくして再び痛みやシビレが現れます。酷くなると足が壊死する場合もあります。
糖尿病
糖分過多の食生活や運動不足、遺伝、免疫異常、妊娠によって血中血糖値が高くなることで喉の渇き、頻尿、尿の泡立ち、食欲増進、疲労感、体重減少、視力低下、手足のしびれやむくみ、傷が治りにくい、性欲減退、勃起不全などの症状の他、失明、腎不全、足の壊疽、脳梗塞や心筋梗塞などの合併症を引き起こします。
足根管症候群
足首の内くるぶしの下には筋肉の腱や血管、神経が通るスペースがあり、これを足根管と呼びます。足首の内側付近に出来たガングリオン(良性の腫瘤)、足首の骨折や捻挫、偏平足などが原因で足根管を通る脛骨神経が圧迫されて立ったり、歩いたり負荷が掛かると足首の内側から足底部に痛みやシビレを生じます。
脳の病気(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血・脳腫瘍)
脳の病気が原因で足にシビレが生じる病気は1)脳梗塞、2)脳出血、3)くも膜下出血、4)脳腫瘍などがあります。脳梗塞は脳内の血管が動脈硬化や血栓によって詰まることで脳細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり細胞が壊死する病気で、片側の口が動かなくなったり、片側の手足にしびれや麻痺、ろれつがまわらなくなります。脳出血は脳内の血管が動脈硬化や高血圧が原因で破れて漏れ出し脳内に血の塊(血腫)ができることで頭痛や吐き気、手足の麻痺やしびれ、言語障害などを引き起こします。くも膜下出血は脳を覆う3つの膜(硬膜・クモ膜・軟膜)のうち、クモ膜と軟膜の間(くも膜下腔)を流れる血管にコブ(動脈瘤)ができ、それが破れ出血する病気です。突然バットで殴られたような酷い頭痛や吐き気、嘔吐を発症するのが特徴です。手足の麻痺や意識障害が起きる場合もあります。脳腫瘍は脳に腫瘍ができたり、他の部位の癌が転移(肺がん・乳がん・大腸がんなど)して脳に腫瘍ができて脳細胞が圧迫され頭痛や痙攣、手足の麻痺や感覚障害、言語障害、視力・視野の異常、平衡感覚の異常などが起こります。脳の病気は命にかかわる病気の可能性もあります。上記の様な症状を発症したら至急、病院で診察を受ける必要があります。
足の痺れの一般的な治療は・・・
腰椎椎間板ヘルニアには安静、コルセット装具の使用、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)、筋弛緩薬、神経ブロック注射等の保存治療が候補に上がりますが、効果が無ければ手術が検討されます。
腰部脊柱管狭窄症ではリハビリや姿勢改善、就労時のコルセット使用、鎮痛薬や血流改善薬等の保存治療が候補に上がりますが、効果が無ければ手術が検討されます。
腰椎すべり症では症状の強さによって非ステロイド系抗炎症薬、筋弛緩薬、抗うつ薬、コルセット装具、硬膜外ブロック注射、神経根ブロック注射などの保存療法が行われますが、効果がなければ手術が検討されます。
閉塞性動脈硬化症では抗血小板薬や抗凝固薬、運動療法などが行われますが、場合によってはカテーテル治療やバイパス手術が行われます。
糖尿病では原因によって異なりますが、通常は食事・運動療法が基本になります。それで改善出来ない場合は糖尿病薬やインスリン療法になります。
脳梗塞では抗血小板薬や抗凝固薬、脳出血では血圧を下げる薬物療法と手術が行われます。くも膜下出血では薬物療法や手術が行われます。脳腫瘍では抗がん剤治療や放射線治療、手術が行われます。
カイロプラクテックでは
カイロプラクティックでは下肢の感覚や筋力と密接に関わりのある背骨と背骨を通る神経に着目します。
下肢の感覚(痛み・温度・触覚)は皮膚にある感覚器によって感知され、それは感覚神経を介して脊髄を通って脳へ伝わります。入力された情報を基に脳は適切な判断を下して、その指令が再び脊髄から運動神経を介して筋肉へ伝わります。
不良姿勢や長時間のパソコン作業、スポーツの反復練習などで背骨に歪みが生じると、背骨を通る神経にも神経障害が起こり、感覚器からの情報が正しく脳へ届かなくなったり、脳からの指令が正しく筋肉へ伝わらなくなります。
それが感覚異常(手のシビレ)や筋力低下(力がはいらない)といった症状を発症します。
カイロプラクティックでは背骨の歪みを整える事で、背骨を通る神経障害を取り除き、手や腕のシビレや筋力低下の根本的な解決を図ります。