食欲不振 Anorexia

食欲不振は「お腹が空かない」、「食べられない」、「食べたいという欲求がない」などの状態のことで、大きな悲しみやショック、ストレスなどが原因で一時的なことなら心配ありませんが、長期間、食欲不振が続くと命にも関わる場合もあります。 食欲不振の原因は加齢、夏バテ、生活習慣の乱れ(睡眠・運動不足、暴飲暴食)、ストレス、妊娠初期のつわりの他、消化器系の病気(逆流性食道炎・胃炎・胃/十二指腸潰瘍・胃がん・機能性ディスペプシア・肝炎)、内分泌系の病気(甲状腺機能低下症)、摂食障害、うつ病、癌などの病気で起こる場合があります。

先ずはそれらの原因について簡単に説明します。

 

加齢

加齢によって消化器官の働きが低下したり、運動量が減ったり、味覚の悪化などが原因で食欲の低下が起こります

 

夏バテ

高温多湿の室外とエアコンのきいた室内との気温や湿度の差によって自律神経が乱れて食欲不振や疲れが起き易くなります。又、夏場に冷たい食べ物や飲み物の摂り過ぎや一日中エアコンのきいた屋内で過ごす事でも内蔵の血流が悪くなって食欲不振や身体の冷えを発症します。

 

生活習慣の乱れ(睡眠不足・運動不足・暴飲暴食)

睡眠不足は自律神経の乱れを引き起こし、運動不足はエネルギー消費の減少、暴飲暴食は大量の食べ物や飲み物に消化が追いつかず、それぞれ食欲の低下を招きます。

 

ストレス

私たちの消化器官の働きは交感神経が優位な時は抑制され、副交感神経が優位な時は促進されます。緊張や不安、恐怖や心配事、過剰な音や光などのストレスは交感神経を優位にして消化器官の働きが抑制され、食欲の低下を招きます

 

妊娠によるつわり/悪阻(おそ)

つわりの原因はっきりと分かっていませんが、妊娠中にエストロゲン値や人絨毛ゴナドトロピンが高くなったり、精神的な不安やストレスによる自律神経の乱れによって妊娠5週目頃~16週目頃の間に吐き気、嘔吐、食欲不振、めまい、だるさ、脱水、頻脈、血圧の低下、体重減少などが起こります

つわりは妊婦さんの半数以上で起こると言われていますが、妊婦さんの0.5%程度はつわりが重症化した悪阻を患うと言われていて、適切な治療を受けないと脳や肝臓に障害が起きたり、胎児にも悪影響が及ぶ場合があります。

 

逆流性食道炎

食道と胃の境目には胃の内容物の逆流を防ぐ括約筋がありますが、加齢による筋力低下や肥満や妊娠、衣類の締め付けによる胃の圧迫、食べ過ぎ等が原因で括約筋が緩み、食道に胃の内容物が逆流して炎症が起きる病気です。胸やけや呑酸(どんさん:すっぱいものが上がってくる)、げっぷ、喉の痛みや咳などを発症します。

 

胃炎

ピロリ菌感染が原因で胃の粘膜に慢性の炎症が起きる病気で、みぞおちの不快感や痛み、食欲の不振等を引き起こします。

 

胃/十二指腸潰瘍

胃や十二指腸の粘膜がピロリ菌や内服薬(非ステロイド性抗炎症薬)の長期使用によって傷つく病気で、みぞおちの痛み、吐き気、嘔吐に加えて右側の肩や背中、腰に痛みを生じる場合があります。

 

胃がん

ピロリ菌感染、喫煙、塩分の摂り過ぎによって胃の粘膜に癌細胞が発生し増殖する病気です。みぞおちの痛みや不快感、食欲の低下や胸やけ、吐き気、出血による黒い便や体重減少などが起こります。

 

機能性ディスペプシア

胃・十二指腸の運動異状や知覚過敏、胃酸分泌、生活習慣の乱れ(アルコールの多飲、喫煙、ストレス、不眠)などが原因で胃や十二指腸に炎症や潰瘍、癌などがみられないのにみぞおちに痛みや不快感、胃もたれ、早期満腹感などの症状を発症します。

 

肝炎

生肉、魚介類、体液、血液を介するウイルス感染、アルコールの多飲、薬の副作用などの影響で肝臓に炎症が起きて肝機能が低下する病気で、皮膚や白目が黄色くなったり(黄疸)、疲労感、食欲不振、吐き気などを起こします。

 

甲状腺機能低下症

免疫異常が原因で免疫細胞が自己の甲状腺を攻撃して炎症を起こす慢性甲状腺炎(橋本病)、ヨウ素不足、脳下垂体の異常による甲状腺ホルモンの分泌の減少などが原因で疲労感、むくみ、寒気、便秘、体重増、脱毛、乾燥、生理不順、抑うつ、倦怠感、無気力感などを発症します

 

摂食障害

体型や体重を過度に意識したダイエット、学校の成績不振や職場での失敗経験、家庭環境における不満などが原因で短時間に大量の食べ物を食べた後、意識的に嘔吐したり(神経性過食症)、標準体重以下でも肥満体型だと思い込んで食事を拒むようになります(神経性食欲不振)

 

うつ病

はっきりとした原因は分かっていませんが、長期間ストレスに晒されて過剰に分泌されたストレスホルモン(コルチゾール)が神経細胞を障害したり、精神安定を促進するセロトニンや脳の覚醒を促進するドーパミンの働きを弱めることで強い悲しみや気分の落ち込み、意欲や喜びの低下など感情減退症状を引き起こしたり、不眠、食欲低下、頭痛、肩凝り、消化器の症状を発症する場合もあります。

 

食欲不振の一般的な治療は・・・

生活習慣の改善(栄養バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠時間の確保)が基本ですが、病気が原因の場合にはそれぞれの病気に対する治療が必要になります。

つわりが酷い悪阻では輸液やビタミン剤などの薬物療法や漢方薬による治療等が行われます。

逆流性食道炎の治療は胃酸の分泌を抑える薬物療法や生活習慣の改善(カフェインや飲酒、脂肪分の摂取を控えたり、禁煙、姿勢の改善など)も大切です。

胃炎ではピロリ菌除去治療(プロトンポンプ阻害薬と抗生物質)が行われます。

胃・十二指腸潰瘍では胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬・H2受容体拮抗薬)や、胃の粘膜を保護する薬、ピロリ菌の除菌治療等が行われます。

胃がんでは状態に応じて内視鏡を用いた切除手術、腹腔鏡手術、開腹手術や術後の化学療法などが行われます。

機能性ディスペプシアでは生活習慣の改善(ストレスの軽減、禁酒、禁煙、睡眠時間の確保)に加えて胃酸分泌抑制薬や消化管運動機能促進薬などが使用されます。

肝炎では食事療法、補液、ステロイド薬、抗ウイルス薬などが行われます。

摂食障害では対人関係療法、精神療法、認知行動療法、家族療法を行って不適切な自己評価や食行動の是正を図ります。

うつ病では仕事の量を減らしたり、自宅療養をしながら心の休養をとり、必要に応じて抗うつ薬や抗精神病薬、抗不安薬や睡眠薬などの薬物療法、精神療法や電気けいれん療法などが行われます。

 

カイロプラクティックでは

食欲不振の原因は様々ですが、カイロプラクティックでは私たちの摂食行動を制御する自律神経の働きに着目します。

私たちの摂食行動は脳(視床下部)にある摂食/満腹中枢によって制御されています。

体内の各感覚器の情報(胃や腸の内容物の量や血糖値など)は神経(迷走神経・脊髄)を介して常に脳(視床下部)へ伝えられ、脳はその情報を基に摂食行動をとるか、抑制するかの判断を行って、その指令は自律神経を介して消化器へ伝えられます(摂食行動をとる際は副交感神経経路で各消化器は活発に活動し、摂食を抑制する際は交感神経経路で書く消化器の活動は抑制されます)。

この身体の感覚器からの情報と脳からの指令の伝達は全て背骨を通る神経を介して行われます。

もし背骨に歪みが生じると、背骨を通る神経に障害が起こって感覚器からの情報が正確に脳に伝わらなくなったり、脳からの指令が正確に各消化器官に伝わらなくなって食欲不振をはじめ様々な不調を発症する可能性があります。

カイロプラクティックではそんな背骨の歪みを整える事で、神経障害を取り除き、あなたの身体の自律神経の働きの正常化を図ります。