腰痛 Low Back Pain

腰は上半身の体重を支えつつ、身体の曲げ伸ばしやひねり動作など複雑な運動が起こる部位。国民生活基礎調査が2022年(令和四年)に発表したデータによると日本人が訴える自覚症状の第一位は男女ともに「腰痛」、第二位が「肩凝り」、第三位が男性では「頻尿」で女性では「関節痛」との事。

そんな腰痛の主な原因は加齢や運動不足、不良姿勢ですが、それら以外にも筋/骨格系、泌尿器系、消化器系、婦人科系、血管系の疾患でも腰痛を発症する事があります。

始めにそれらの病気について簡単に説明します。

筋骨格系の病気(急性腰痛・腰椎椎間板ヘルニア・腰部変形性脊椎症・

  腰部脊柱管狭窄症・腰椎すべり症・側弯症・圧迫骨折)

体を動かす時(立ち上がる、身体を曲げ伸ばしする、身体をひねる、歩くなど)に腰痛が現れる場合は筋骨格系の病気が疑われます。急性腰椎症は重い物を持ち上げた後や長時間しゃがんで作業をした後から腰が痛くなり一般的に「ギックリ腰」と呼ばれ、腰の周りの強い痛みが特徴です(下肢の症状は稀)。腰椎椎間板ヘルニアは腰椎に負担が掛かる事で背骨の軟骨(椎間板)が本来の位置からズレて神経を圧迫する病気です。腰痛以外に、神経症状(下肢のシビレや痛み)や排尿・排便障害が起こる事もあります

腰部変形性脊椎症は加齢によって腰椎や軟骨(椎間板)が変形することで腰痛や下肢の痛み・シビレを発症します

腰部脊柱管狭窄症は加齢によって背骨を通る脊髄の通り道が狭くなる病気です。腰痛や歩行時の下肢のシビレや痛み(間歇跛行)を発症します。

腰椎すべり症は腰椎が骨折や加齢が原因で本来の位置から前方へずれて脊髄や脊髄から下肢へ伸びる神経を圧迫する病気です。腰椎のズレに応じて無症状であったり、腰痛や下肢の痛み・シビレを伴う場合もあります。

側弯症は本来は真っ直ぐな背骨が左右に捻じれて曲がる病気です。左右の肩や肩甲骨の高さに差異を生じたり、背中や腰の痛み、心肺機能に問題を生じる場合もあります

圧迫骨折は骨密度が低下した高齢者に多く、軽く尻もちをついたり、背中をぶつけたり、時には咳やくしゃみ程度の負荷で背骨が圧迫され骨折する病気で、ベッドから起きたり、姿勢を変えたり、身体を動かした時に背中や腰に痛みを発症します。

泌尿器系の病気(尿路結石・膀胱炎・腎盂腎炎)

腰痛が起こりやすい泌尿器系の病気には、尿の停滞や感染、内分泌や代謝の異状で尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に石ができる尿路結石、膀胱の細菌感染によって炎症が起こる膀胱炎、膀胱炎が悪化して腎臓の腎盂にも細菌感染が起こる腎盂腎炎などがあります。症状としては腰痛のほかに、尿路結石なら排尿痛や血尿、吐き気、膀胱炎なら排尿痛や血尿、頻尿、腎盂腎炎なら発熱や寒気を発症します。

 

消化器系の病気(胃/十二指腸潰瘍・胆石/胆のう炎・膵炎)

腰痛を起こす消化器系の病気は、胃や十二指腸の粘膜がピロリ菌や内服薬(非ステロイド性抗炎症薬)の長期使用によって傷ついて起こる胃・十二指腸潰瘍、胆のうや胆管にコレステロールが主成分の石ができる胆石、胆嚢の細菌感染によって炎症が起こる胆嚢炎、アルコールの多飲や脂肪分の摂取過多によって膵臓に炎症が起こる膵炎などが挙げられます。いずれもみぞおちなど上腹部の痛みや吐き気・嘔吐などの症状が現れ、右側の肩や背中、腰が痛むように感じられることもあります

婦人科の病気(卵巣嚢腫・卵巣捻転・子宮外妊娠)

腰痛を発症しうる婦人科系の疾患は、卵巣に腫瘍ができる卵巣嚢腫、卵巣嚢腫の腫瘍が大きくなって卵巣が捻じれる卵巣捻転、受精卵が子宮内膜以外の部位(卵管、頸管、卵巣など)に着床する子宮外妊娠などが考えられます。卵巣嚢腫は初期段階では殆ど自覚症状はありませんが、大きくなって卵巣捻転を起こすと下腹部の痛み、腰痛、性交痛の他、痛みによる吐き気・嘔吐がみられることがあります。子宮外妊娠では、初期では無症状または下腹部の痛みが現れますが、胎児(胚)が成長すると周囲の組織を破って出血を起こします。

血管の病気(腹部大動脈瘤・大動脈解離)

腹部大動脈瘤や腹部大動脈解離といった血管の病気でも、腰痛が現れる場合があります。腹部大動脈瘤は心臓から胃や肝臓、腸や腎臓、そして下肢へ血液を供給する大動脈動脈の壁の一部が動脈硬化や感染、外傷が原因で脆弱化して瘤(こぶ)ができる病気で、瘤が小さい時は自覚症状はありませんが、瘤が大きくなると声帯をコントロールする神経が圧迫されると声がかすれたり(嗄声)、食べ物が気管に入ったり(誤嚥)、胸や背中・の痛み、血痰や息苦しさ等を発症します。腹部大動脈解離は70代以降に発病する事が高く、腹部大動脈の内壁が動脈硬化、高血圧、喫煙、ストレス、高脂血症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、外傷などが原因で裂ける(解離)病気で、解離が起これば突然、胸やお腹、背中や腰に強い痛みを生じます。直ぐに医療機関で治療を受ける必要があります。

 

腰痛の一般的な治療は・・・

腰痛の治療は原因によります。

急性腰痛には安静、コルセット装具の使用、鎮痛薬などの保存療法が行われます。

腰椎椎間板ヘルニアには安静、コルセット装具の使用、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAID)、筋弛緩薬、神経ブロック注射等の保存治療が候補に上がりますが、効果が無ければ手術が検討されます。

腰部変形性脊椎症や脊柱管狭窄症ではリハビリや姿勢改善、就労時のコルセット使用、鎮痛薬や血流改善薬等の保存治療が候補に上がりますが、効果が無ければ手術が検討されます。

すべり症にはコルセット使用や硬膜外ブロック注射や神経根ブロック注射を行いますが、効果が無ければ手術が検討されます。

側弯症では捻じれの程度に応じてコルセット装具の使用、リハビリ、捻じれが大きい場合は手術が検討されます。

圧迫骨折では骨の状態に応じて安静、コルセット装具の使用、鎮痛薬が行われ、場合によっては背骨を補強する手術が検討されます。

尿路結石に対しては飲水や食事指導、体外衝撃波、レーザー治療、膀胱炎や腎盂腎炎に対しては抗菌薬での治療が行われます。

胃・十二指腸潰瘍には胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬・H2受容体拮抗薬)や、胃の粘膜を保護する薬、ピロリ菌の除菌治療等が行われます。胆石には薬物療法や体外衝撃波療法、胆嚢摘出術が行われます。

膵炎には禁酒、低脂肪食、たんぱく分解酵素阻害薬。

卵巣嚢腫では子宮内膜の増殖を抑えるホルモン療法や手術、卵巣捻転では手術、子宮外妊娠では手術が行われます。

大動脈瘤や大動脈解離では人工血管置換手術などが行われます。

 

カイロプラクティックでは・・・

カイロプラクティックでは泌尿器科疾患・消化器疾患・婦人科疾患・血管疾患が原因による腰痛の可能性を排除した上で、背骨とその配列(生理弯曲)、そして背骨を通る神経に着目します。

私たちの上半身の重さは全体重の70%と言われており、その上半身を支えているのが背骨と背中/腰の筋肉群です。

その背骨には脊髄(せきずい)と呼ばれる神経が通っていて、そこから枝分れした神経が下肢の感覚情報を脳へ伝えたり、脳からの指令を下肢の筋肉に伝えて足を動かしています。

不良姿勢や長時間のパソコン作業、スポーツの練習時における反復動作などで背骨に歪みが生じると、正常な配列が崩れて背骨や背中/腰の筋肉群に負担が掛かり、更に背骨を通る神経にも神経障害が起こりやすくなります。

そんな背骨の歪みを放置すると、腰痛や脚のシビレ・筋力低下、関節痛などの症状を発症しやすくなります。

カイロプラクティックでは背骨の歪みを整え、配列を改善することで背骨や筋肉の負担を取り除き、神経機能を正常化して症状の根本的な改善を図ります