
呼吸困難(息苦しい・息切れ)Breathing Problems
息切れや息苦しいなどの呼吸困難を起こす病気は血液の病気(貧血)、呼吸器の病気(気道内異物・慢性閉塞性肺疾患COPD・ぜんそく・肺炎・胸膜炎)、循環器の病気(心不全・弁膜症・先天性心疾患・虚血性心疾患)、ホルモンの病気(甲状腺機能亢進症)、神経や筋肉の病気(筋ジストロフィー・重症筋無力症・筋萎縮性側索硬化症ALS)、過換気症候群などが挙げられます。
始めに呼吸困難の原因について簡単に説明します。
貧血
血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの主成分は鉄であり、体内に酸素を届ける役割を担っています。鉄分の摂取不足や妊娠、授乳、過多月経や消化管からの出血などが原因で赤血球のヘモグロビンの量が少なくなると体内の酸素が欠乏してめまいやたちくらみ、頭痛や息切れ、倦怠感や疲労感、寝起きが悪い、顔色が悪いなどを発症します。
気道内異物
生後三歳未満の児童がピーナッツや枝豆、ビニールやプラスチックなどを口に運び、それが誤って気道に入ってむせたり、呼吸困難を起こす状態で、場合によっては窒息してしまいます。
慢性閉塞性肺疾患COPD
喫煙や大気汚染、有害物質の吸い込みによって肺や気管支が炎症を起こし、咳や痰が出たり、息切れ、呼吸時にゼーゼー/ヒューヒュー等の音を発する(喘鳴)、発作性呼吸困難、呼吸筋疲労による疲労感などを発症します。
喘息
遺伝、アレルギー反応、微小異物(ガスや粉塵など)、薬(アスピリンやβ遮断薬など)が原因で気管支が炎症を起こして狭くなり、呼吸時にゼーゼー/ヒューヒュー等の音を発したり(喘鳴)、呼吸困難を伴う咳、就寝後の咳や息苦しさなどを引き起こします。
肺炎
肺内に細菌やウイルスが侵入、増殖して炎症を起こし、発熱や咳、痰、呼吸困難、筋肉痛、腹痛、下痢等を発症します。
胸膜炎
ウイルスや細菌感染、癌、自己免疫疾患、薬の副作用などが原因で肺を覆う胸膜に炎症が起きて胸腔に胸水が溜まって咳や息切れ、胸の痛み等を発症します。
心不全
心臓疾患(心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋炎、先天性心疾患)や高血圧、甲状腺機能亢進症、貧血などが原因で心臓の機能が低下して体内の酸素が低下し、動悸や息切れ、疲労感や倦怠感、むくみ等の症状を発症します。
弁膜症
心臓内の弁が加齢や感染症、心筋梗塞などが原因で変性が生じると心臓に過剰な負担が掛かって動悸や息切れ、疲労感や倦怠感、むくみ等の症状を発症します。
先天性心疾患
ダウン症候群や18トリソミーなどの染色体異常、妊娠中のアルコール摂取や喫煙などが原因で心臓や血管に異状が生じ、チアノーゼ(低酸素によって皮膚が青白くなる)や息苦しさ、低体重や知能発達の遅れなどを生じます。
虚血性心疾患
虚血性心疾患とは心臓に必要な酸素や栄養を運ぶ血管が狭くなったり詰まることで心臓に障害が起こる病気の総称で、狭心症と心筋梗塞を指します。
狭心症は心臓の表面の冠動脈(心臓自体に血液を供給する血管)が狭くなることで階段を上がったり、重い物を持ったり、少し速足で歩いたりした際に胸やみぞおち、背中の痛みや圧迫感、胸やけ等を発症します。上半身(特に左側)の肩こりや腕、顎や歯の痛みを発症する場合もあります(関連痛)。
心筋梗塞は狭心症が悪化し、細くなった血管に血栓が詰まって心臓の細胞が壊死してしまう病気で、心不全や不整脈、突然死を引き起こす恐れがあります。虚血性心疾患は高血圧や糖尿病、脂質異常症などの持病や睡眠不足や運動不足、喫煙歴のある方のリスクが高い疾患です。
甲状腺機能亢進症
バセドウ病(免疫異常によって甲状腺が攻撃される病気)、甲状腺や脳下垂体に出来る腫瘍などが原因で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されて心拍数や血圧の上昇、発汗や手の震え、不眠、過食、体重減少、下痢、不安感、イライラ等(自律神経失調症に類似した症状)を引き起こします。
筋ジストロフィー
遺伝子変異が原因で筋肉に必要なタンパク質が作られず、筋肉が弱っていく病気で、全身の筋力低下、呼吸や嚥下、心臓や呼吸機能にも障害が起こります。
重症筋無力症
神経と筋肉のつなぎ目が自己抗体によって破壊されることで手足の力が入れずらい、疲労感、眼瞼下垂や複視(物が二重に見える)、しゃべりずらい、飲み込みずらい、呼吸がしずらい等の症状を発症する難病です。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
はっきりとした原因は分かっていませんが、脳や脊髄の神経がダメージを受ける事で筋肉へ指令が伝わらなくなって手足や喉、舌や呼吸筋などが痩せて手足を動かしたり、話したり、嚥下や呼吸にも障害が起きて人工呼吸器が必要になります。国内に約一万人のALS患者がいるとされ、中年(60~70代)以降の男性に発症しやすいと言われています。
過換気症候群
心理的ストレス(不安・恐怖・緊張)、激しい運動、疲労、睡眠不足などが原因で呼吸が多くなり過ぎ(過呼吸)て、血中内の二酸化炭素濃度が低くなり過ぎて呼吸が出来なくなる状態です。動悸・胸の痛み・めまい・頭痛・ふらつき・不安感や死の恐怖などのパニック状態に陥る場合もあります。
呼吸困難の一般的な治療は・・・
貧血の治療では鉄剤の内服や食事療法などが行われます。
気道内異物の場合は背部叩打法や心肺蘇生法が行われます。
慢性閉塞性肺疾患COPDでは禁煙のもと、薬物療法や呼吸リハビリが行われます。
喘息では気道の炎症を抑える長期管理薬(ステロイド吸入薬)や発作治療薬が使用されます。
肺炎では抗菌薬や抗ウイルス薬が使用されます。
胸膜炎では原因に応じて抗菌薬や抗がん剤が使用されます。
心不全では利尿薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、β遮断薬などの薬物療法や酸素療法等の保存療法が行われますが、改善が見られない場合はペースメーカー埋め込み治療等が行われます。
弁膜症では人工弁置換手術や弁形成手術が行われます。
先天性心疾患では症状に応じて内服薬や点滴薬、カテーテル治療などが行われます。
虚血性心疾患では抗血小板薬や抗凝固薬が使用されます。
甲状腺機能亢進症ではβ遮断薬やヨウ素剤、腫瘍摘出手術が行われます。
筋ジストロフィーではステロイドを使った薬物療法や筋力維持の為の運動療法、原因遺伝子の働きを弱めるエクソンスキッピング療法などが行われます。
重症筋無力症では神経伝達を改善する薬物療法や免疫機能を抑えるステロイド薬や免疫抑制剤などが行われます。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)では病気の進行を遅らせる薬物療法や抗不安薬、胃ろうや人工呼吸器などが使われます。
過換気症候群では落ち着いて、ゆっくりとした呼吸を続ければ30~60分以内で治まります。原因によっては抗不安薬を使った薬物療法やカウンセリングが行われます。
カイロプラクテックでは
呼吸困難の原因は様々ですが、カイロプラクテックでは私たちの呼吸を制御する神経の働きに着目します。
私たちの呼吸は延髄にある呼吸中枢によって制御されています。
血中酸素濃は頸動脈のセンサー(頸動脈小体)によって常にモニターされており、酸素濃度の低下が探知されるとその情報は神経(舌咽神経枝)を介して延髄(孤束核)の呼吸中枢に伝わり、呼吸を指示する指令が神経(横隔神経&肋間神経)を介して筋肉(横隔膜&外肋間筋)へ伝わって呼吸運動が促されます。
この横隔神経(C3~5)も肋間神経(T1~12)も背骨を通っており、もし背骨に歪みが生じると、脳から筋肉(横隔膜や外肋間筋)への神経伝達に障害が起こって正常な呼吸運動に悪影響が及ぶ可能性があります。
カイロプラクテックでは背骨の歪みを整える事で、神経障害を取り除き、呼吸運動の正常化を図ります。