
不眠 Insomnia
健康な人でも心配事や試験の前日、旅行全やなどの要因で「眠ろうとしても眠れない」という不眠体験がありますが、通常はそれらの不眠は一時的で数日から数週間以内に解消します。しかし不眠が長引くと日中の眠気や倦怠感、仕事や学校でのパフォーマンスの低下、頭が重い、情緒の不安定、食欲不振などの心身の不調が現れます。そんな不眠が3か月以上続く状態を不眠症と言います。 不眠症を放置するとうつ病や動脈硬化、糖尿病のリスクが高まると言われています。
ただし加齢とともに不眠症状は増加し、60歳以上では半数以上が不眠症と言われています。不眠症の治療の必要性は日中に心身の不調が現れているか否かが判断基準となります。
一般的な不眠(症)の原因はストレス、アルコール、精神疾患、薬の副作用などですが、以下の病気でも不眠や睡眠障害が起こる事があります。
むずむず脚(レストレスレッグス)症候群
60~70代の女性に多く、遺伝、若しくは鉄分不足が原因で夕方から夜にかけて脚の不快感(脚がムズムズする感じ、虫が足をはう感じ、脚が暑い/冷たい感じ)を訴えてなかなか寝付けなかったり、就寝中に何度も目を覚まします。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群
肥満によって喉の周りの脂肪が気道を圧迫する為、仰向けで寝ると大きないびきをしたり、呼吸が何度も止まってしまいます。血管や心臓に負担が掛かって高血圧や脳卒中のリスクが高まります。夜に熟睡出来ない為、日中に強烈な睡魔が起こる事もあります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群
心臓や脳、腎臓の異常(心不全、脳卒中、腎不全など)が原因で呼吸中枢が正常に働く事が出来ず徐々に呼吸が止まって、無呼吸、浅い呼吸、深い呼吸、浅い呼吸、無呼吸という特徴的な呼吸パターン(チェーンストーク呼吸)を繰り返します。
不眠の一般的な治療は・・・
不眠や睡眠障害に対する一般的なアプローチは原因に応じて異なりますが、禁酒、減塩、運動などの生活習慣の改善に加え、鉄剤、ドパミン系薬剤、非ドパミン系薬剤、利尿薬、ACE阻害薬、β阻害薬などの薬物療法や持続陽圧呼吸療法(CPAP)が基本となります。
カイロプラクティックでは・・・
カイロプラクティックでは睡眠に影響を及ぼす自律神経に着目します。
私たちが眠気を感じるのは脳(松果体)から分泌されるメラトニンと呼ばれるホルモンの働きによるもの。
私たちが朝日を浴びると、目から入った光は神経を介して脳(視交叉上核)へつたわり、その刺激によって脳内(縫線核)からセロトニンというホルモンが分泌されます。セロトニンは私たちの精神安定や脳の覚醒、食欲や痛みの抑制などの役割があります。
日が沈んで光の刺激が無くなるとセロトニンの分泌が止まり、日中に分泌したセロトニンが脳内(松果体)でメラトニンに変換されます。メラトニンは睡眠ホルモンと呼ばれ、私たちを睡眠に誘導し体内時計の調整や免疫機能の向上などの役割も果たしています。
背骨に歪みが生じると、背骨を通る自律神経に障害がおこります。
自律神経は脳内の血流を調整しており、その働きが妨げられると日中に分泌されるセロトニンの分泌が不安定になったり減少します。
その結果、メラトニンの分泌も減少して寝つきが悪くなったり、睡眠中に何度も目が覚めたり、早朝に目が覚めたり様々な睡眠障害を発症します。
カイロプラクティックでは背骨の歪みを整えることで自律神経の働きを正常化し、症状の根本的な改善を図ります。
症例1 ぐっすり眠れるようになって日中のイライラが軽減!
患者:30代 男性 小学校教師 S.Y.さん
主訴:仕事で忙しいせいか、平日の夜は寝つきが悪くて日中もイライラしてしまう。慢性の肩凝りもある。
検査結果:視診にて頚椎の軽度前方変位(ストレートネック)と胸椎の後方変位(猫背)を確認。 頸椎可動域検査では右回旋と右側屈、伸展方向に制限が認められた。
治療内容:頚椎(C1~7)の前方変位を改善すべく前方から後方(A⇒P)へ、上部胸椎(T1~4)の後方変位を改善すべく後方から前方(P⇒A)へ施術(モビリゼーション)を行った。
治療後:頚椎の右回旋、右側屈、伸展方向の可動域が改善し、首や肩が軽くなったと喜ばれた。 正しい座位姿勢に加え、定期的な姿勢改善ストレッチをアドバイスし、一週間後に再検査を行う事をお伝えして終了した。 一週間後の再診時では肩凝りがかなり改善し、前回の来院時からよく眠れるようになったとの事だった。 来院から約一か月後(来院3回目)には肩凝りや不眠も改善し、昼間にイライラする事が大分減ったと喜ばれた。
症状改善後は月に一回程度メンテナンスケアを継続し、仕事が忙しい時は多少の肩凝りは気になるが、睡眠に関しては毎晩熟睡できており日中のイライラも気になることなく過ごせている。
考察:職場(小学校)で多忙な毎日を送っている事で精神的な緊張状態が続いていた事に加え、長年のパソコン業務等で背骨や首/肩の筋肉に慢性的な負荷が掛かり、更に自律神経に乱れが生じて入眠障害を招いていたと推測される。
施術によって背骨の歪みが整った事で背骨や首/肩の筋肉の負担が軽減し、自律神経の働きも正常化したことで症状が改善したと考えられる。